ハムはちっちゃいのがうまい

遅ればせながら、今年の日本シリーズの感想を。
今回の対戦を一言で言えば、ちっちゃい野球ちっちゃい野球。ちっちゃい野球とは、いわゆるスモールベースボール(またはスモールボール)のことだが、要はホームランなどの長打力に頼らず、単打、四死球、犠打、盗塁などの小技をからめて勝ちをもぎ取るそつのない野球のことだ。このところのプロ野球界はスモールボール全盛で、昨年の日本&アジアチャンピオンのロッテ、昨年のワールドシリーズチャンピオンのシカゴホワイトソックスなどもスモールボールのチームと言われている(その対極にあるのが、言うまでもなく金満大味チームの巨人軍とヤンキース)。


そして今年の両リーグの覇者、日本ハムと中日も根っからのスモールボールのチームで、たしか犠打の数ではともにリーグ一だったと思う(一方、ホームラン数も多いんだけどね)。この両者が対戦した今回の日本シリーズは、当然スモールボール合戦となるわけだが、ところが同じようなプレイをしても、はっきりと明暗が分かれた。それはたまたま日ハムに運があっただけなのかもしれないんだけど、ワタクシには運だけはないように思えたのだ。


同じスモールボールでも、日ハムのそれはのびのびしており、対する中日は窮屈に感じたのだ。


これはひとえにシーズン半ばで引退を表明するという掟破りな方法で強引にチームの中心に居座った新庄によるところが大きい。単なる単打なのに両手を広げてベースを駆け抜けるような新庄にしかできないショーマンシップでもって、ややもすればプレイ自体がちっちゃくなりがちなちっちゃな野球を楽しげにのびのびとやってみせたからだ。一方の中日はというと、これが悲しいくらい地味な選手のオンパレードで、加えて、新庄という太陽に照らされたモンだから、自分たちの地味さが余計身に染みてしまい、プレイがいつもよりも窮屈になった…。そんな気がするのですが、いかがでしょうか。


それから落合の変貌も中日敗因の一つだと思う。


最後まで中日に勝てず、結局ペナントを逃してしまった阪神タイガースのファンとして見た、シーズン中の落合博満はとらえどころのない正体不明な男で、クールというか不気味であった。ところが、その落合がセリーグを制した時に、実は何度も蘇ってくる阪神が怖かったんだよーとか、優勝して嬉しいよーと大泣きするなど、急に人間臭くなってしまった。人間臭さを出したおかげで、マスコミなどからは好意的に取り上げられたようだが、それって勝負師としてはどーなのよってお話である。


事実、ワタクシは見た。シリーズ第1戦を川上で辛勝し、第2戦も途中までリード。戦前の予想では、先発投手がダルと八木しか計算できない日ハムを初戦と2戦目で叩けば、中日の4タテもかなりの確率でありと言われていた今シーズンだ。まさに落合の狙い通りの展開でコトが運んでいたというのに、なぜかシリーズに勝てない男、山本昌が逆転打をくらい、試合をひっくり返されてしまう。その日ハムの逆転劇が進行する間、テレビカメラはベンチの落合を時折とらえていたのだが、この時の落合は、明らかに動揺していた。特に目がキョドッていた。あんな落合の顔をワタクシはかつて見たことがなかったので、びっくりし、同時に、ははーんこりゃ中日ヤバイなと思った。


そしたら案の定、その後いいとこなしの4連敗で中日は日ハムに敗れ去ったのだ。


他を寄せ付けないオレ流という言葉で、根拠のない自信めいたものナインに浸透させていた落合も、ひとたび人間味を見せたがために、そのバリヤーが破れやすくなっていた…。


願わくば、来年も人間くさい落合であって欲しいっす…。(虎ファン心のつぶやき)